大きい会社でも関係ないよ。ウォーターサーバー事業は。

業界現役時代は代理店開発担当でした。その時に会社の偉い人からこんな事を言われます。
「大きな会社を代理店にしろ!」
その理由はこうです。

1.資金力のある会社は顧客をどんどん増やしてくれるだろう
2.支店や店舗が沢山有るから簡単に売れるだろう
3.そのうちお水の製造工場まで作ってくれるかもしれない

会社の偉い人達はこのように考えるわけですが、これはとんだ勘違いです。そう、100%間違っています。
偉い人達はあまり代理店開発をしたことがありません。そして自分が現場営業をしていた頃のことを忘れています。
仮に大きい会社を代理店にした場合下記のような事が起こります。

1.思っていたほど顧客が増えない
2.会社が大きすぎて本部の言うことを聞かない。偉そうでワガママ。
3.クレームで騒ぎ出し何かと本部のせいにし、他の代理店をたきつける

困った代理店になります。そして大きな会社なのでその後に辿る道は決まっています。

それが、偉い人達の特権による特別対応です。
簡単に言うとえこ贔屓ですね。例えば仕入れ金額を安くしたり、近隣に代理店を増やさない約束をしたりするのです。
そしてこのような行為は密室で行われ現場担当者には知らされません。偉い人達が勝手に決めてしまうのです。
ある時突然現場担当者にこの事実が告げられます。そして現場担当者はその他弱小代理店との間で板挟みになるという構図です。

ですからウォーターサーバー事業ではあまり大きな会社を代理店にすることは得策ではないと考えられます。
これが代理店ではなくOEMのような暖簾分けなら特に問題ないと思います。
oemでは大きな会社が続々と参入してます。コスモウォーターのoemに多いようです。でも上手くゆきませんね〜

では何故大きな会社でも顧客が増えないのでしょうか?
その理由は事業構造を紐解くと見えてきます。ウォーターサーバー事業は基本的にはブルーカラーの仕事です。誰もが羨むような華やかな仕事ではなく末端労働者が日々お水を運んだり顧客開拓をする仕事です。華やかなのは一部の本部員のみでその他は給料もさほど高くなく大変な仕事だといえるでしょう。

このようなビジネスは昔からある仕事で、業態が近いのがプロパンガス、新聞、宅配牛乳、運送、ダストコントロール、飲料ベンダー、リネンなどのガテン系もしくは社会的地位の低い誰でも就職できる業界です。ウォーターサーバー業界はこれらの業界が衰退してゆく中で駆け込み寺的に事業化されてきたビジネスです。ですからメーカー本部の多くがガス屋やダストコントロール業界の会社なのです。
そしてそれらの代理店として成功している会社の多くもそれらに準ずる業界の会社というケースが一般的です。

しかしウォーターサーバー業界というのはそれらの業種に比べてかなり“クリーン”なイメージが有り、それら以外の業界からも参入する会社があります。そこでメーカー各社は勘違いを始めるのです。「ついに胸を晴れる事業が育った」と。
これが大きな間違いです。現場営業に近いところで仕事をしているとよく分かりますがビジネスの実態は変わっていませんので相変わらずブルカラーです。そのブルーカラーの仕事に「クリーン」なイメージで参入する会社はほぼ失敗します。

しかし本部の幹部たちはすっかり調子に乗っていますので、そのような現実が見えなくなるのです。
そこで冒頭申し上げたような「大き会社と代理店契約してこい!この事業はそれだけの価値がある」と言い出すわけです。

あまりにも上層部がうるさいので、ある時、代理店の本業事業規模と顧客数の相関図を作成したことが有ります。その結果、見事に会社規模と顧客数には全く比例関係がないことが証明されました。またある一定年数で多くの会社が停滞することも判明しました。※その理由はまた別の記事で。

またまた、仕方がないのでその結果を会議で報告し下記のような意見を述べました。

「ウォーターサーバー事業はやはりブルーカラーなので、一流企業は参入しません。また参入したとしても伸びない上に面倒な代理店になること必須です。ですから本部よりも事業規模が小さく、ブルーカラーの仕事に抵抗の少ない業種にターゲットを絞りましょう。」

もっともだと思いませんか?でもね・・・こんな事を上場企業の会議室で発言すると・・・集中砲火を浴びますよ・・・。
まあ実際に浴びたんだけどね。そこで私の言うことを聞いていれば・・・何年も前から言ってたんだから・・・

では何故大きな洗練された会社だと上手くゆかないのかを解説します。
何度も述べているようにウォーターサーバー事業はブルーカラーの仕事です。これは言い換えれば“誰でもデキる仕事”とも言えます。
洗練された企業には“優秀な人材”も多くいます。その彼らはウォーターサーバー事業にも“効率”を求めようとする訳です。しかし誰でも出来る簡単な仕事ですから“効率”よりも“作業量”が効果的です。

すなわち“長時間労働イズベスト”という簡単な答えにたどり着いてしまうのです。より多くのお客様と接点を持てばある一定の割合で契約になりますでのどれだけ多くのお客様に会えるかが焦点です。それはすなわち“時間が長い”方が勝つのです。

多くの優秀な人はこの“人海戦術”的な考え方が嫌いです。しかし単純作業の繰り返しがウォーターサーバー業界ですから、いずれつまらなくなり耐えられなくなります。そこで多くの洗練された会社が脱落してゆくのです。
深いことは考えずとにかく動いた量が多い会社が沢山の顧客を獲得するという単純明快なルールが有るのです。ハッキリ言って“バカ”の方が向いています。あれこれと余計なことを考えると手が止まるので最悪です。

「怖い現場責任者」と「少々思考回路の鈍い現場作業員」と「長時間労働」にて成り立ってしまう業界なのです。

ですから、頭のいい優秀な人達はあれこれ考えてしまうので向いていません。
頭のいい新卒などは最悪です。すぐに辞めてしまいます。

そしてネックが“給料”です。ウォーターサーバーはストックビジネスと言われる先行投資型ビジネスです。このビジネスモデルは赤字が先行して数年後に黒字化しその後長い年月をかけて資金回収をするというビジネスです。その為、優秀な人々に支払うだけの原資が稼げません。ですから給料が安いのです。
ここでも“バカ”が向いています。安い給料でも他の仕事ができなければ会社にとどまり頑張って働いてくれます。しかし優秀な人は自身の働きと給料を客観的に判断できるため別の業界に転職してしまいます。優秀な人は身の回りの人々や友人も優秀なので、他の業界の人々と交流を持ってしまいます。すると自分の業界に疑問が浮かんでくるのです。バカは他の業界と接点が持てないため長い間とどまります。井の中の蛙です。

この記事を書いている私もその一人でした。メーカー本部に長年在籍していて、なおかつ代理店担当をしているとこのウォーターサーバービジネスは自身でオーナーにならないかぎり大金をつかむことは出来ないことがよく分かってきます。

ウォーターサーバー業界は残念ながらコマとして働く限り不遇のビジネス人生を送ることになる事業モデルです。
ウォーターサーバー事業は若い従業員が、比較的安い賃金で働いてくれると上手に回ってゆきます。しかし事業自体は単純な仕組みなので特に目新しいスキルを取得することは出来ません。そのまま年齢を重ねてゆくと40歳以上になった時に転職するだけのスキルを持っていないことに気が付き絶望することになります。これはウォーターサーバーに限ったことではありませんが、私は多くのそのような諸先輩方を見てきました。本当に可愛そうです。そして給料は徐々に削られてゆきます。

少し話がそれてしまいましたが、上記のような理由から大企業では成功することが難しい事業モデルだといえます。
だだ大企業でもブルーカラーの仕事がわかっている会社なら大丈夫です。例えばうるのんを運営するザ・トーカイという会社は静岡のエネルギー系名門企業で東証一部に上場しています。この会社は大丈夫でしょう。理由は元々ブルーカラーだからです。
プロパンガス等のエネルギー事業では末端従業員がブルーな仕事に従事しています。ですからウォーターサーバーはむしろホワイトな仕事に感じるため問題ありません。先行投資もどんどん拡大してくるでしょう。

なんだか取り留めのない記事になってしまいましたが、おそらくオリックスが買収したコスモウォーターはこれから代理店開発のスピードを加速させると思います。しかし上記のことを理解していないでしょうかから開発した代理店が育たないというジレンマに見舞われるはずです。オリックスブランドがありますので幾つかの大企業がコスモウォーターのOEM代理店になるかも知れませんが、数年たっても顧客が増えないという現実に直面するはずです。予言しておきます♪

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