キリンアクウィッシュ撤退について思うところ

キリンのウォーターサーバー事業アクウィッシュが撤退です。
顧客はフレシャス(富士山の銘水)に譲渡される模様。元々OEMの親元ですからユーザーは特に混乱することは無いでしょう。

さて、ここで私の推測を述べたいと思います。
あくまでも推測なので、何の裏付けもありませんので(笑)勝手な想像です。

キリンがウォーターサーバー事業に参入したのが2013年1月です。ウォーターサーバー業界最大の震災特需期から2年近く経過した後です。
これは明らかに参入の判断が遅いと思います。多くの新規参入メーカーが震災後1年以内に事業を開始する中、かなりモタモタしています。
しかもそれだけモタモタしたのにフレシャスのOEMとしてスタートするというチキンぶり(笑)

近年ミネラルウォーター業界は順調に成長しています。お水にお金を払うという事が一般化してきました。
水ビジネス黎明期は各飲料メーカーが業界を引っ張っていました。それはサントリーであり、キリンであり、アサヒでありと言ったナショナルブランドの大手メーカーです。ところが震災前あたりからウォーターサーバー業界が活気づいてきました。
当時のリーディングカンパニーはアクアクララです。アクアクララやクリクラの快進撃が始まり、お水の出荷量ベースではウォーターサーバー業界が無視できない規模に成長してきました。そして震災が起こりウォーターサーバーが需要爆発期を迎えます。

それまでは各飲料メーカーはウォーターサーバー業界のことは大して気にしていなかったと思います。ウォーターサーバーメーカーはまだまだ規模も小さく、母体企業のあまり大きい会社ではなかったからです。

ところが急速に発展する業界に各飲料メーカーが焦り出します。そこで元々ウォーターサーバー事業を展開していたサントリーがテレビCMを始めたり、全国展開を開始することで顧客獲得に動き出します。それを見て更に焦ったのがキリンの幹部(※これ、勝手な推測ですから)。ある時、新規事業担当者に言い出します。

「なぜ、うちはウォーターサーバー事業を持っていないんだ!エンドユーザーを囲い込むチャネルを作る絶好の機会だろ!キリンのネームバリューがあれば業界を席巻できるはずだ!今すぐ参入しなさい。」

すでに時が遅いことは承知しながら新規事業担当者は市場調査を開始します。ところが自社には元々エンドユーザーを獲得するすべがないことに気が付きます。また個人宅への配送システムも持っておらず顧客管理手法もノウハウがありません。
困った担当者はOEMでの事業参入を検討します。しかしリターナブルでは配送網を自社で構築しなければならず、初期投資が膨大な事がわかりました。そこで、ワンウェイでの参入を考えます。ワンウェイの候補メーカーはコスモウォーター、クリティア、フレシャスです。この中で大手の手が付いていないのがフレシャス。そしてフレシャスと事業提携することにします。

色々と比較検討して、社内稟議が通過する頃にはすっかり震災特需は終了しており市場は緩やかな成長局面に入っています。
全ては、事業開始を言い出したの稟議を通してくれない幹部のせいです。

ノウハウはフレシャスから調達することが出来るため事業は比較的スムーズにスタートすることが出来ました。
しかしフレシャスはネットでの集客がほとんどで、現場営業のノウハウがない事が判明。ウェブでの販促はどうしても親元であるフレシャスには敵わず苦戦します。現場営業での獲得が難しい上に、代理店開発のノウハウもない為、仕方がないのでウェブ販促に力をいれる事にしました。ところが思うように顧客獲得が進まず、当初予定した販促コストから大きく乖離します。
その為事業開始前に想定していた事業計画には遠く及ばず、事業担当者は毎月毎月報告会がいやでたまりません。

しかし幹部は強気姿勢を崩さず、ついにはフレシャスと合弁会社まで作ってしまいます。でもこの段階で担当者は気がついています。
「この事業はそんなに直ぐには利益が出ない」事を。
OEM供給を受けている限りコストには限界があります。合弁会社を作り製造工場を自作することでコストを下げようと言う思惑があったのかもしれませんが、それは顧客が想定通り獲得できることが条件です。顧客が増えなければ結局コスト倒れになるのです。

担当者が予想したとおり顧客はあまり増えてゆきません。
しかしウォーターサーバーはストックビジネスですから、数万件の顧客を作ってしまえばその後販促経費を抑えることで十分に利益回収が見込めます。顧客獲得期は赤字運営になりますがその後は安定的な黒字運営が見えています。

ところろが・・・なかなか黒字化しない事業に会社幹部が苛立ち始めます。
ストックビジネスの経験がないため、いくら説明しても理解してもらえないのです。
「いつになったら回収できるんだ?」「見込みは?」「獲得コストが上昇していないか?」等々です。
何度説明してもダメです。

そしてこの度事業撤退が決まったのです。

担当者の思いとしては「幹部の一声ではじまって、振り回され、やっと利益が出そうになったのに撤退するなんて・・・」といった所でしょう。一番経費のかかる顧客獲得だけを行ってその後の利益回収はせずに顧客をフレシャスに引き継いで撤退するなんて・・・なんてセンスが無いのでしょうか?
スタート時からチキン臭がしていましたがやはり勘所を間違えています。その点コスモウォーターの経営者織田一族はオリックスに事業を200億円で売却して店じまいという神業をやってのけました。嗅覚が素晴らしい。
どう考えてもコスモウォーター事業が200億円の価値があるとは思えないのですが・・・これからクレームの嵐でしょうし・・・

と・・・まあ勝手に想像したキリンアクウィッシュのウォーターサーバー事業参入から撤退までの物語でした。
私はキリン関係者ではないので上記はあくまでも推測です。でもどうだろう・・・そんなに外れていないのでは?と感じています。そしてこの物語には“アサヒ”が登場していません。おそらくアサヒもウォーターサーバー事業の参入は検討しているはずです。今回のキリンアクウィッシュ撤退はアサヒのウォーターサーバー事業検討にも大きな影響を与える事になるでしょう。

ちゃんちゃん。

関連記事

ページ上部へ戻る